宮城県4病院再編問題(代表質疑)

2021年12月2日から12月17日までの16日間の日程で、仙台市議会第4回定例会(12月議会)が開会中です。

私は12月9日の代表質疑に登壇しました。初当選して3年目、代表質疑に初めて立たせていただきました。皆様のおかげ様で活動させていただいていますので、市民生活の向上のために少しでも前進できる質疑をしていきたいです。質疑と答弁要旨をいくつかの投稿に分割してここに掲載します。

2021-12-9 いのまた由美質疑: 宮城県 仙台医療圏 4病院再編問題

当日の発語と差異がありますのでご了承ください。数か月後に公開される「会議録」が正確な文言です。「一括質問」の形式ですが、ここではトピックごとに質問と答弁が対応するように入れ替えをして掲載しています。

宮城県が公表した「政策医療の課題解決に向けた県立病院等の今後の方向性について」に関する仙台市の考え

いのまた由美
いのまた由美

宮城県が9月9日に「県立病院等の今後の方向性」を公表し、仙台赤十字病院と県立がんセンターを統合して名取市に、並びに東北労災病院と県立精神医療センターを合築して富谷市に、という想定が突然示されました。

その「県方向性」を受け、仙台市は地域医療に悪影響が出かねないとする「本市の考え」を11月15日に公表しました。市内の2病院については特に、本市の救急医療、周産期医療、災害医療、地域連携支援などに加え、今般の新型コロナウイルス感染症対応でも大きな役割を担っていただいている、本市にとって大変重要な医療機関であるとして、データを示したものです。

私たち社民フォーラム市議団としても仙台市内の医療体制を考慮して県に対して統合を中止するよう求めてきましたし、住民の皆さんと移転に反対する署名活動にも取り組んだりしていましたので、仙台市が考えを示したことを評価いたします。

救急搬送について

いのまた由美
いのまた由美

質問の1点目は 救急搬送についてです。

宮城県議会の11月定例会では、「仙台市が示した考え」を受けて、質疑もされています。まず救急搬送についてですが、村井嘉浩宮城県知事は、病院再編によって地方の搬送時間短縮、仙台市の負担軽減につながると述べています。どのような分析をすればそう言えるのかが疑問です。本市の認識を伺います。

仙台市当局
仙台市当局

(市長 答弁):
宮城県では病院の移転により、周辺自治体から本市への搬送が減少し「市の負担軽減につながる」旨を述べておりますが、仙台医療圏における救急需要の集中度合いや各消防本部の救急搬送の実態などについて、把握と検証が十分ではないため、こうした評価になったものと考えております。
仮に病院が移転した場合でも、救命救急センターを有する三次医療機関及び脳卒中や循環器等の専門病院への搬送など、引き続き市域外からの救急搬送が相当数見込まれ、現在の2病院の受入数を踏まえますと、本市の負担は逆に増加する恐れがあると認識しております。

精神医療について

いのまた由美
いのまた由美

質問の2点目は 精神医療についてです。

「本市の考え」においても、「県立精神医療センターに通院・治療している患者へどのように説明して対応するのか。どのような影響があると考えているのかを明確にする必要がある」としています。残念ながら社会の中に精神科への偏見はまだまだある中で、精神科患者の退院後の受け皿も含めた名取市や仙台市太白区などでの地域の協力や生活の場づくりは、20年・30年かけて築いてこられたものです。精神医療センターの富谷市への移転は、患者の住まいや障害福祉サービスなど生活の維持に大きく影響するので、中止すべきと考えるものです。本市の所見を伺います。

仙台市当局
仙台市当局

(健康福祉局長 答弁)
 精神医療への影響についてでございます。
県立精神医療センターでは、昭和32年の開設以来、民間の医療機関では対応の難しい精神障害の方に対する入院医療や、退院後の通院医療に取り組んでおります。
そのため、この医療センターを主治医療機関として長年通院している仙台市民もおり、その多くが、太白区及び若林区にお住まいの方々となっております。
こうした方々が安定した生活を継続するには、環境の変化に十分留意する必要がございます。仮に病院が移転した場合、通院の時間が長くなることや通院先の変更を余儀なくされることにより、治療の中断や病状の悪化に至る方が相当数おられるものと懸念されるところでございます。

回復期病床の充実について

いのまた由美
いのまた由美

「本市の考え」では市内2病院が地域連携支援において果たしている役割も丁寧に解説されています。市内2病院は地域包括ケア病棟・回復期病床を設けています。
地域包括ケア病棟とは、急性期を過ぎた患者さんが、退院後の在宅や介護施設などでの生活への復帰に向けて、医療やリハビリなどの支援を行う病棟です。
市内2病院は、青葉区・太白区をはじめとした近隣の診療所等との連携が築かれています。仙台医療圏においてもいまだ不足している回復期病床の確保は必須であると本市は示しています。県知事は11月定例会で、「急性期病床が過剰で、回復期病床が不足」という説明を繰り返しています。仙台市内から回復期病床を移転させたとしても、回復期病床の充実にはつながりません。県は、県内の回復期医療の充実こそ責任をもって図っていくべきと、本市は求めていくべきですが、ご所見を伺います。

仙台市当局
仙台市当局

(市長 答弁)
現在の宮城県地域医療構想では、仙台医療圏において将来的に急性期病床が過剰になるとされる一方で、回復期病床が不足する旨が示されており、その確保は、本市はもとより、仙台医療圏の将来的な医療提供においても重要な課題でございます。
先般の第1回懇話会におきましても、医療資源を効果的かつ効率的に活用するためには、急性期から回復期、療養、在宅に至るまでの流れを構築することが重要であるという意見もございました。しかしながら、今般の県の方向性において、この回復期病床の確保については、何ら示されておりません。
今回の再編が、本市及び仙台医療圏全体における課題解決に本当に結び付くものなのかどうか、情報やデータを示して明らかにするとともに、慎重な検討を進めていく必要があるということを、県に対し、繰り返し申し述べてまいりたいと存じます。

参考として: 過去の質疑や議会の決議

2020-12-10 第4回定例会 社民党仙台市議団 代表質疑

石川けんじ 議員
石川けんじ 議員

名取市にある宮城県がんセンターと、本市内にある東北労災病院と仙台赤十字病院の連携、統廃合の協議をめぐっては、救急医療や周産期医療など、本市のみならず宮城県内の医療提供体制のバランスが崩れ、後退するのではないかとの危惧が県民に広がっており、現地存続を望む声が高まっています。市民の命と健康に責任を負う市長として、この声にどう応えようと考えているのか所見を伺います。

仙台市当局
仙台市当局

(市長 答弁)

 県立がんセンターなど三病院の統合、連携などの協議に関わるお尋ねについてでございます。
 東北労災病院及び仙台赤十字病院には、救急医療や周産期医療などで大変重要な役割を担っていただいておりまして、これが仮に統合や移転となれば、本市の医療提供体制と市民の皆様の生活に大きな影響が及ぶものと認識をしております。
 私といたしましても、両病院の存続を望む地元の町内会や医療関係者など、多くの皆様の切実な願いをしっかりと受け止めて、県に対して、早期に検討状況を開示していただくこと、それからまた関係者の意見を聞きながら検討を進めることにより、市民、県民の皆様の安心の確保に努めていただけるよう、引き続き求めてまいりたいと存じます。

2020-12-11 第4回定例会 一般質問 いのまた由美 周産期医療

いのまた由美
いのまた由美

 三病院統合問題について、名前の挙がっている仙台赤十字病院については、総合周産期医療拠点としても重要な病院です。リスクの高い出産を引き受け、出産後も小児科等が低体重出生児や多胎児、障害児などの子供が成長していく過程を支えています。
 さらに、コロナ禍にあって地域医療の重要性は高まっていますが、看護師になるためには必ず現場での実習が必要です。私の母校の仙台市医師会看護専門学校でも、仙台赤十字病院で実習をさせていただいており、私も婦人科と小児科の外来で実習させていただきました。医師会看護学校卒業生の養成のためにも、仙台赤十字病院は地域になくてはならない病院です。周産期医療の拠点としての仙台赤十字病院の御当局の認識を伺います。

仙台市当局
仙台市当局

(健康福祉局長 答弁)
 仙台赤十字病院に関する認識についてでございます。
 仙台赤十字病院は、令和元年度には781件と市内分娩件数の約1割を担うなど、市内における分娩、出産において大きな役割を果たしていただいております。
 また、東北大学病院とともに、県内の総合周産期母子医療センターの一つとして位置づけられており、重症患者や地域の分娩施設における急変患者の受入れを行うなど、市内はもとより、県内の周産期医療においても重要な役割を担っている病院であると認識をしております。

2020-05-21 健康福祉委員会 いのまた由美 医療法改正と病院統合問題

いのまた由美
いのまた由美

私からは地域医療に関して宮城県の3病院の統合問題について現状を伺いたいと思います。仙台日赤病院、東北労災病院、県立がんセンターの統合問題に関しての現状、今どうなっているか、お分かりのことを教えてください。

仙台市当局
仙台市当局

◯次長兼保健衛生部長  県立がんセンター等三病院の連携統合の検討に関しましては、県からも現在も協議が継続されているが、何らかの情報を提供できる段階にはないと伺っているところでございます。引き続き情報の把握に努めるとともに、必要に応じて県に対してしっかりとした対応を求めてまいりたいと存じます。

いのまた由美
いのまた由美

ぜひよろしくお願いいたします。今、新型コロナ感染症が広がっている中で、病床の不足やワクチンに関しても訪問して打っていただく医師が不足しているなど医療現場は疲弊していますが、今国会で医療法等の改正が行われました。これは三病院統合問題のような公立病院の集約化などの原因になっていることと思いますが、今回の宮城県への影響についてどう考えているか所見を伺います。

仙台市当局
仙台市当局

◯次長兼保健衛生部長  今回の法改正につきましては、地域の適切な医療を効率的に提供する体制の構築ということで、地域医療構想の実現に向けた法改正というふうに認識してございます。今後、具体には県のほうで地域医療構想の検討の中で様々議論がなされると思いますけれども、その中で仙台市として必要な意見は申し述べていく形になろうかと思います。

いのまた由美
いのまた由美

ぜひ今国が進めている病床を削減したところに補助金を出すとかという方針ではなくて、先ほどから課題として上がっているような新型コロナに協力していただける医療機関を増やして財政を支援をしていくですとか、医療従事者の処遇を充実させて確保していくだとか、今必要な医療政策というのはそういうことだと思いますし、本市や県の皆さんもそのために必死で頑張っていただいている中で、このような医療法等の改正ということに対してきちっと県や国に要望していかないとならないと思いますし、県の三病院統合問題が今協議の中身が相変わらず見えない状況で、報告していただくことが進んでいないというようなことをおっしゃっていますけれども、医療法の改正というのはそれの弾みをつけていく懸念を大変持っておりますので、どうか仙台市民の皆さんから要望されていますように本市の病院をなくしていかないようにきちんと意見を言っていただくために、まずは情報を明かしていただけるよう今後とも求め続けていただきたいと思います。

2021-10-12 仙台市議会決議「市内病院を含む病院再編に関する宮城県等による協議に関する件」

決議   市内病院を含む病院再編に関する宮城県等による協議に関する件

 宮城県においては、昨年8月以来、関係者による仙台赤十字病院、東北労災病院、 県立がんセンターの連携・統合に関する協議を進めてきた。仙台赤十字病院と東北労災病院は、合わせて市内救急搬送のおよそ1割を受け入れているほか、災害時医療や周産期医療など、本市医療提供体制において大きな役割を果たしている医療機関である。これらの病院においては運営上の様々な課題があるとしても、その統合・再編は、市民生活に大きな影響を与えるものであり、地域住民や医療関係者などから、不安や懸念を示す切実な声が上がり、本市としても、宮城県に対し、市民、関係者の理解を得ながら進めるべきであること、そのために積極的な情報提供を行うことなどを求めてきた。
 またこの間、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により患者受入病床がひっ迫するなど、医療提供体制の新たな課題が明らかとなったところである。このような状況の中、宮城県においては、本市、関係者等に対する説明がないまま、9月9日に、仙台赤十字病院と県立がんセンターの統合、東北労災病院と県立精神医療センターの合築の二つの枠組みからなる方向性を示し、関係5者による協議を開始することを合意した旨を公表した。これに対し、本市議会は、宮城県において、本市に対する積極的な情報提供を行い、医療提供体制の影響を受ける自治体をはじめ、市民・県民、医療関係者などの声に真摯に耳を傾けるとともに、熟慮の上、慎重に判断するよう求める。
 また、市当局におかれては、市民の命と健康を守るため、本市における適切な医療提供体制が確保できるよう、適時・適切な対応を行うとともに、宮城県との議論の機会を積極的につくるよう更に努めることを求める。

 以上、決議する。

 令和3年10月12日

                                  仙台市議会

録画配信や会議録

質問の3営業日後には録画中継も視聴できます。「いのまた由美/令和3年第4回定例会/12月9日/本会議(代表質疑)」をご覧ください。

仙台市議会インターネット議会中継
仙台市議会インターネット議会中継

正式な会議録がホームページに公開されるのは2月頃と思います。

トップページ | 仙台市議会会議録
仙台市議会で行われた会議の内容を検索できる。

資料

2016-11 宮城県 地域医療構想

宮城県の地域医療政策は2016年11月策定の「地域医療構想」に基づいて進められてきましたが、2020年「3病院統合」2021年「4病院再編」問題は、その枠組と別のところで進められているようです。4病院再編を「県の政策医療の課題解決に向けた取組」と銘打っているのは、おおきなまやかしだと思います。議論の経過が隠されていますし、2021年9月に公表された「県方向性」を読んでも、まず統合ありきで、そのための理屈付けをしているようにみえます。宮城県の政策医療の課題として、今回の病院再編問題であえて語られていないのは、今回の市長答弁にあるように「急性期から回復期、療養、在宅に至るまでの流れを構築」し、地域で安心して住み続けられるよう医療・介護・福祉の連携を充実させていくことと、そのための医師や医療従事者や介護福祉従事者の育成や確保(待遇改善)をしていくことだと考えます。

宮城県地域医療構想
地域医療構想

2021-9-9 宮城県医療政策課:「政策医療の課題解決に向けた県立病院等の今後の方向性について」

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2021-11-15 仙台市健康福祉局健康政策課:宮城県が公表した「政策医療の課題解決に向けた県立病院等の今後の方向性について」に関する本市の考え

4病院の再編に係る本市の対応について