教育機会確保法を仙台市はどのように考えているのか

仙台市議会会議録より、教育機会確保法について

「仙台市議会会議録」で、「教育機会確保法」をキーワードに検索をすると、これまで仙台市や教育局がどのように考えて施策に反映してきたのかを探る一助になると思います。

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仙台市議会会議録より、私いのまた由美の質疑の記録を、転載します。

2019年12月議会より

令和元年第4回定例会(第4日目) 本文 開催日: 2019-12-13

適応指導教室「杜のひろば」の充実と、
そのほかの居場所にいる不登校児童生徒への支援の充実を

仙台市当局
仙台市当局

●市長:
多様で適切な学習活動の機会を確保することにより、子供たちの将来を見据えた社会的自立に向けて、実態や意向に沿って丁寧に取り組みを進めていくことが重要であるという認識のもと、組織的、継続的な支援を行う
●教育長:
学校内外における子供たちの居場所づくりや、不登校相談員の拡充などについて検討を進めるとともに、有識者からの継続的な助言をいただきながら、不登校対策の一層の充実に努めてまいりたい

いのまた由美の質問

58: ◯五番(いのまた由美)
不登校児童生徒への支援の在り方についてという、教育確保法に関する文科省の通知が、ことし十月二十五日に出されました。不登校児童生徒への支援は、学校に登校するという結果のみを目標にするのではなく、不登校の時期が休養や自分を見つめ直すなどの積極的な意味を持つことがあるとされています。
 本市の不登校児童生徒数は増加傾向にあり、二〇一八年度は一千六百六十八名となっています。五年前の一・四八倍です。
 不登校の要因を二〇一八年にNHKが比較調査した結果によりますと、教員などが回答している文科省調査では、要因は家庭にあるとする回答が三〇・八%、いじめを要因とするものは〇・四%で、教員との関係、部活動、決まりや校則という要因は二から三%でした。
 一方で、子供自身が回答しているNHK調査では、教員との関係が要因だとするのが二三%で一位、いじめ、部活動、決まりや校則、家庭がともに二一%でした。
 ある不登校保護者グループの方は、不登校になる子は、特に心が優しい子が多く、先生にも気を使う傾向があります。先生方が忙しく、人手が足りな過ぎて、子供一人一人に配慮できない状況が問題だと考えます。子供の声は聞けているでしょうか。子供が学校に息苦しさを感じてしまっています、とおっしゃっています。
 私も不登校の児童生徒と保護者を適応指導して学校へ戻すという考え方だけでは、もう状況を改善できないと考えています。先ほどの調査結果の受けとめもあわせて、御所見を伺います。
 不登校児童生徒の受け皿として考えられている適応指導教室、杜のひろばは、定員オーバーの状態が続いています。不登校は中学生が多いため、杜のひろばでも中学生が多く、通うことを諦めている小学生が多いと聞きました。そして、小学生は、まだ保護者と離れられない子もいるので、不登校になった児童と保護者は毎日の居場所を切望しております。学校復帰という結果のみを目標にするのではない形で、居場所ともできるように、杜のひろばの拡充や充実が必要と考えられますが、御所見を伺います。
 また、杜のひろば以外にも多様な居場所や学びの場は必要だと考えます。どこにも居場所がなく、苦しみ、自分たちで居場所づくりをしている当事者のグループもあります。仙台市不登校支援ネットワークなどでも取り組まれていると思いますが、不登校支援団体や当事者グループと仙台市との話し合いの場を充実させて、ともに検討することも必要と考えます。文科省通知、不登校児童生徒への支援の在り方についての仙台市の受けとめと、今後どのように支援していくのか、取り組みを伺います。

市長の答弁

59 ◯市長(郡和子)ただいまのいのまた由美議員の御質問にお答えを申し上げます。
 不登校児童生徒の支援についてでございます。
 不登校の原因というのは、一人一人さまざまでございます。また、不登校に至る本人の心の動きというのも複雑なものがあろうかと思います。支援に当たっては、その状況を的確に把握し、学校と家庭が情報を共有するとともに、子供たちの思いや考えをしっかりと受けとめることが大切であると、このように考えております。
 そのためには、多様で適切な学習活動の機会を確保することにより、子供たちの将来を見据えた社会的自立に向けて、実態や意向に沿って丁寧に取り組みを進めていくことが重要であると、このように認識をいたします。
 こうした視点に立った組織的、継続的な支援を行うことで、全ての子供たちがそれぞれの特性や能力に応じてその可能性を伸ばし、自立していくことができるよう、教育委員会とともに施策を進めてまいりたいと存じます。

教育長の答弁

62: ◯教育長(佐々木洋)
 次に、不登校児童生徒への支援の取り組みについてでございます。
 国からも示されておりますとおり、不登校対策につきましては、不登校の児童生徒が主体的に社会的自立などに向かえるよう、適切なかかわりや必要な働きかけを行うとともに、児童生徒が安心して過ごすことのできる学校づくり、居場所づくりを進めることが重要であると認識しております。
 本市は、学校における取り組みのほか、市民団体や民間企業等とともに不登校支援ネットワークを組織し、不登校児童生徒やその保護者を支援する取り組みを進めているところでございます。
 今後も学校内外における子供たちの居場所づくりや、不登校相談員の拡充などについて検討を進めるとともに、有識者からの継続的な助言をいただきながら、不登校対策の一層の充実に努めてまいりたいと存じます。

2020年2月議会より

令和2年第1回定例会(第4日目) 本文 開催日: 2020-02-18

・「教育機会確保法」文科省通知を学校現場へ浸透を
・不登校児童生徒の居場所や親の会とのネットワークの充実を
・学校の別室で学ぶ児童生徒へ専任の担任を

仙台市当局
仙台市当局

教育長:
●「教育機会確保法」通知の周知
合同校長会で周知。スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどにも研修などの場で周知
●保護者支援
今後は、フリースクールや民間団体等からも保護者による活動について情報を収集し、職員を派遣してお話を伺うなど、連携を深める
●別室登校
専任教諭を導入するに当たっての課題整理を初めとした検討を進める

いのまたの質問

33: ◯五番(いのまた由美)

 本市の二〇一八年度の不登校児童生徒数は一千六百六十八名であり、児遊の杜と杜のひろばに通級していた児童生徒数は二百五十一名と伺いました。特に、小学生の保護者からは、杜のひろばは定員を超えていて通うことができないという声を聞いており、受け皿の拡大を求めてきましたので、増設は適切と考えます。けれども、児遊の杜や杜のひろばだけでは、増加する不登校児童生徒の学校外の過ごし方への対応も十分ではありません。
 不登校児童生徒への支援の在り方についてという、教育機会確保法に関する文科省の通知が昨年十月二十五日に出されました。不登校児童生徒への支援は、学校に登校するという結果のみを目標にするのではないというもので、私も昨年十二月の本会議で認識を伺いましたし、今議会でも教育長もその通知にのっとって御答弁をされています。けれども、児童生徒や保護者と直接対応する教育現場でも、この通知にある考え方はまだ浸透していないのではないでしょうか。
 不登校は、子供や家庭の問題行動であるから、登校させなければならないという、これまでの周りからの捉え方では、傷つき困っている子供本人や家庭をさらに追い詰めることにもつながります。教員やスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど、教育現場で通知をどのように周知しているのか、伺います。
 昨年三月には、本市の不登校対策検討委員会の報告書で提言が出されています。それらを反映できるよう今後も施策を進めていくことが重要と考えます。現在、本市では学校と学校の外との連携に取り組んでいますが、児遊の杜、杜のひろば、またフリースクールにもつながっていない不登校の子供や家庭の状況は、十分に捉え切れていません。不登校の保護者の支援や実態把握や調査を進めていくべきと考えます。具体としては、現在仙台市内では児遊の杜や杜のひろばに所属している以外でも、自主的な親の会や子供の居場所づくり、ネットワーク化が進んでいますので、意見交換などを行い、取り組みを補強していくことを求めますが、御所見を伺います。
 学校訪問対応相談員は、学校の教室以外の別室で過ごしている児童生徒の個々の状況に応じた支援をできるので、次年度増員を歓迎します。現在、学校で別室で過ごしている児童生徒は、どのぐらいいるのでしょうか。別室で過ごしている児童や生徒には、その学校ごとに臨機応変に工夫して教員が対応していると聞き及んでいます。不登校の専任の教員や専門家などの大人をふやしていかなければならないと考えます。現状をどのように把握されているのか、その上に立っての今後の取り組みを伺います。
 不登校の子供は、炭鉱のカナリアだというふうにも言われています。今議会でも学校の教育現場の過酷な労働状況など、そういったひずみが子供に体現しているのではないかと考えることもできます。無限の可能性を秘める子供たちの個性を尊重する環境づくりには、教員の多忙状況の改善など、組織体制の強化は欠かせません。通級指導教室などにおけるソーシャルスキルトレーニングの充実など、特別支援教育との連携や発達障害支援との連携、そしてそれぞれの体制強化も必要です。
 一人一人の子供の個性や発達に応じた学びの場を保障することを求めまして、私の第一問といたします。

教育長の答弁

36: ◯教育長(佐々木洋)

 不登校対策に関する文部科学省通知の周知についてでございます。
 昨年十月の通知につきましては、各学校に送付するとともに、今月開催した合同校長会において、全教職員にその趣旨が徹底されるよう指示したところでございます。
 不登校児童生徒や保護者の対応については、教員のみならずスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなども同様に、文部科学省より示された支援の方向性を理解し、組織的に対応することが重要でございます。こうした専門職を対象とした研修の場なども活用しながら、十分に周知を図ってまいりたいと存じます。
 次に、保護者への支援についてでございます。
 適応指導センターでは、不登校児童生徒の保護者を対象とした情報交換や交流の場を定期的に開催しております。また、学校において保護者同士が独自に活動している場合にも、適応指導センターの職員が出向き、情報交換を行う場を随時設けているところでございます。
 今後は、フリースクールや民間団体等からも保護者による活動について情報を収集し、職員を派遣してお話を伺うなど、連携を深めてまいります。
 最後に、各学校における別室の設置状況と今後の対応についてでございます。
 現在、各学校では、複数の児童生徒が別室を利用しており、この支援のため、教員同士が受け持ち授業を調整し対応しております。担当する教員を専任とし、切れ目のない生活指導や学習指導、保護者との面談、学級担任との情報連携を行うことは、安心感や所属意識のさらなる高まりが期待できますので、不登校の初期段階における効果的な手だての一つと考えております。
 こうしたことから、新年度は専任教諭を導入するに当たっての課題整理を初めとした検討を進めてまいりたいと存じます。