ヤングケアラーについて(仙台市議会2021年6月 健康福祉委員会)

2021年6月21日の常任委員会、健康福祉委員会で、ヤングケアラーについて質問しました。会議録はこちらから検索できます。

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2021年9月9日に開会した、第3回定例会の議案で「ヤングケアラーの調査」が提案されていますが、6月の委員会でのヤングケアラーに関する質問や答弁をここに転記しておきます。

仙台市における「ヤングケアラー」への対応の現状

ヤングケアラーとは何か

いのまた由美
いのまた由美

私からは、一般質問でヤングケアラーについてお尋ねいたしましたが、もう少し詳しくお聞きしたいので、お尋ねをいたします。
 ヤングケアラーは、法令上の定義はありませんが、御当局ではヤングケアラーをどのようなものと認識をしているのか、まずお伺いいたします。

仙台市当局
仙台市当局

子供未来局総務課長  
ヤングケアラーにつきましては、法令上の定義はございませんけれども、一般に本来大人が担うと想定されております家事や家族の世話などを日常的に行っている児童というふうに認識をしております。

 

子どもがケアラーであることによって、どんな影響があると捉えるか

いのまた由美
いのまた由美

今年3月に制定された埼玉県のケアラー支援条例では、ヤングケアラーが定義されていいます。条例では、ケアラーの定義を、高齢、身体上または精神上の障害または疾病などにより援助を必要とする親族、友人、その他の身近な人に対して、無償で介護、看護、日常生活上の世話、その他の援助を提供する者とし、ヤングケアラーをそのケアラーのうち18歳未満の者をいうというふうに定義をしています。
 御当局は、子供がケアラーであることは子供にとってどんな影響があると考え、何を課題と捉えていらっしゃるのでしょうか。伺います。

仙台市当局
仙台市当局

子供未来局総務課長  
子供たちが家庭の中で親の家事の手伝いですとか小さい子の世話をするという、そのこと自体はいいことではあるんですけれども、その頻度ですとか時間が手伝いの範囲を超えて過重な負担になり、学業に支障が生じたり、子供らしい生活が送れなかったりするなど、子供自身がやるべきことややりたいことができないような状態になってしまうということが問題であるというふうに考えております。

ヤングケアラー全国実態調査の結果の受け止め

いのまた由美
いのまた由美

 一般社団法人日本ケアラー連盟代表理事の牧野史子さんの勉強会でお聞きしましたが、子供や若者が過度なケアを担うことでの影響ということを示していただきました。子供にとっては、教育機会を逃している、友人関係が思わしくない、疲労やストレスを抱える、若者への影響は、就業機会を逃している、ケアと高等教育との両立に悩んでいる、疲労やストレスを抱え、鬱などの心身の疾病につながっているなどが示されました。
 そのほか、元ヤングケアラーの方からお聞きしたのは、生活経験が不足するということ、自分をおろそかにしてしまうということ、人生イベントの機会を逃すことなども例示をされました。
 子供の権利が損なわれている状況、子供の基本的人権が損なわれている状態だというふうに私は考えます。
 加えて申し上げますと、神戸市では今年の6月からこども・若者ケアラー相談・支援窓口を設置いたしましたが、神戸市では18歳未満の児童だけではなくて、20代の方も含めて施策の対象としています。自分自身の育ちや経験、学びの機会を逃しているということでは、子供から若者まで、18歳で区切ることなく支援をするという考え方も重要なことだと思いますので、申し上げておきます。
 今年の3月に、厚生労働省と文部科学省がヤングケアラーの支援に向けた福祉、介護、医療、教育の連携プロジェクトチームを設置し、中学生、高校生への全国調査も実施をして、取りまとめ報告をいたしました。調査に回答があったうち、世話をしている家族がいる18歳未満のヤングケアラーは中学生の17人に1人、高校生の24人に1人でした。ヤングケアラーの実態が調査により少しずつ明らかになってきていますが、調査内容について御当局の受け止めをお伺いいたします。

仙台市当局
仙台市当局

子供未来局総務課長
ヤングケアラーにつきましては、家庭内のデリケートな問題であることですとか、あとは本人や家族にその自覚がないといった理由などから表面化がしにくく、潜在化しやすい問題だというふうに考えておりますが、今回の国のプロジェクトチームの報告によりまして、ヤングケアラーの実態が公的に示されるとともに、報道等を通じまして社会的な関心も高められたものというふうに受け止めております。

いのまた由美
いのまた由美

 加えて、その調査内容では、自分がヤングケアラーだと自覚している子供はわずか2%で、そういう言葉は聞いたことがないという方が8割を超えていました。
 また、子供と接する時間が長いと思われる学校においても、概念の周知が十分でないというふうな調査が出ています。言葉を知っていて、学校として意識して対応しているのは中学校の20%、高校の10%でした。
 今後、一般質問でもお答えいただきましたが、教育、福祉、介護などの連携を進めていただくということが本当に大切なことだというふうに思います。

 

要保護児童対策地域協議会での取組は

いのまた由美
いのまた由美

次に、厚生労働省から要保護児童対策地域協議会に関する通知が2019年7月に出ており、ヤングケアラーの概念を要対協構成機関へ周知することや、ヤングケアラーではないかという観点でアセスメントをするということを通知されています。本市ではどのような取組をされているのでしょうか。伺います。

仙台市当局
仙台市当局

子供家庭支援課長  
 これまでもヤングケアラーと思われる世帯も見受けられておりまして、ネグレクトなどの児童虐待に当たると思われるケースとして、包含的に虐待リスクの高い家庭として要保護台帳に記載をし、民生委員児童委員協議会、教育機関、宮城県警等の関係機関や区役所、児童相談所などの行政機関を構成員とした要保護児童対策地域協議会実務者会議におきまして情報共有を図り、連携して対応を行っております。
 このような世帯につきましては、家族の介護や看病など複合的な課題を抱えることも多く、引き続き必要な関係機関におつなぎしながら、支援してまいりたいと存じます。

いのまた由美
いのまた由美

御対応いただいていることが分かりまして、ありがとうございます。

把握されている事例

いのまた由美
いのまた由美

本市では、ヤングケアラーとしての集計というのはされていないというふうに伺いましたが、今お聞きしたように日頃の相談や支援の取組の中で様々実態を把握されていると思います。子供未来局所管で、ほかに把握されている事例等ありましたらお伺いいたします。

仙台市当局
仙台市当局

子供育成部長  
 子供未来局所管の施設の中では、例えば児童相談所では日々様々な経路から虐待などの通告があり、対応しておりますが、その中でヤングケアラーと思われるような支援が必要な子供を把握する場合がございます。
 また、子供相談支援センターにおきましても、電話相談やふれあい広場事業などを通じまして、ヤングケアラーと思われる例を把握したという事例もございまして、いずれも家庭環境等を踏まえた上で、必要に応じ関係機関と連携した対応を取っております。

いのまた由美
いのまた由美

健康福祉局の所管でも、ヤングケアラーについて把握されている事例などありましたらお伺いしたいと思います。

仙台市当局
仙台市当局

健康福祉局長  
 健康福祉局におきましては、それぞれの相談窓口を通じまして様々な相談を受けておりますけれども、例えば発達障害のある児童の兄弟が親の代わりに児童の世話をしているといった事例などが実際にあることは承知をしてございます。
 また、支援が必要な方へのサービス提供という観点から様々な御相談を受けておりますけれども、そういった際には当事者のみならずその家族全体への支援ということを配慮しながらやっていかなければならないと考えておりますので、例えば年齢が低い児童が担い手となることを前提としたマネジメントを行うというようなことは適切ではないものとして、相談に当たっているところでございます。

ヤングケアラーという概念や視点で実態を把握することの効果

いのまた由美
いのまた由美

 日本ケアラー連盟などの民間団体の取組によって、ヤングケアラーという概念が広がってきており、先行する自治体でも条例制定や窓口の設置などの取組も始まってきているところです。
 本市では、これまで支援が必要な方には御本人のみならず家族全体を含めての支援に取り組んでこられたということを今お示しいただきましたけれども、今般、政府もヤングケアラー支援の方針を打ち出しております。ヤングケアラーという概念や視点が提起されたことによって、どのような効果があると考えられますか。お伺いいたします。

仙台市当局
仙台市当局

子供未来局総務課長  
 本市では、これまでも各区役所等において、ケアが必要な方につきましては、その御相談をお受けした際、その方へのサポート体制も含めた家族全体を見まして支援を行っているところですが、ヤングケアラーという概念が広まることによりまして、関係機関はもとより地域の方々が家族のケアをしている子供というものを把握しやすくなったりですとか、あるいは子供自身が声を上げやすくなるということが期待できるものというふうに考えております。

こども自身が声を受け止める窓口は

いのまた由美
いのまた由美

 子供自身が声を上げやすくなることについてなんですけれども、子供はほかの家庭の状況が分からないので、自分が家族のために頑張るのが当たり前だと思っていたり、自分がケアしなければならないと考えたりするなど、調査の回答で言われています。ヤングケアラーという概念がテレビやニュースなどでも取り上げられることで、自分の状況把握や認識につながることがあるのではないかと思っています。
 子供が相談しやすいとすれば、まずは学校があると思いますが、本市において現状で学校以外でも子供自らが相談しやすい窓口というのはどちらになるのでしょうか。

仙台市当局
仙台市当局

子供育成部長  
 子供が直接相談できる窓口といたしましては、現状、子供相談支援センターのヤングテレホン相談、また子どもメール相談などがございます。
 併せて今年度、子育て、家庭、親子関係などの悩みについて気軽に相談いただけるよう、LINEを活用した相談窓口を宮城県と共同で開設することを予定しております。子供を含む若年層がより利用しやすいツールを用いた相談窓口として、現在開始に向け調整を進めているところでございます。

いのまた由美
いのまた由美

 子供の声を受け止める窓口として、期待しています。
 最後になりますが、御意見として申し上げますけれども、子供の基本的人権が損なわれているという認識を私は持っていますので、まずヤングケアラーの認知が広がって、子供への支援が早期に行き届くように、まずは各方面で認知度が広がることを求めています。今日は健康福祉委員会ですが、学校のスクールソーシャルワーカーなど教育局で果たしていただく役割も大変大きいと思いますので、国から財政措置のてこ入れなどを求めつつ、教育、福祉、介護など関係部署の連携をさらに進めていただきたいと思います。そして、研修などによって地域やNPOなどにもこの概念を広めていくことが必要だというふうに考えています。
 最後に一番大切なのは、子供自身の声を丁寧に聞いて、受け止めるということだと思います。先日聞いた元ヤングケアラーの声では、かわいそうな子と思われたくないですという声もあれば、一方で誰かに助けてほしかった、ケアを代わってもらいたかったという悲痛な声もあります。ヤングケアラーだったことは誇りと思って頑張ってきたという、いろいろな子供のそれぞれの声がありますので、寄り添った対応ができるよう求めて、終わりたいと思います。